第60回東西四大学合唱演奏会(2011.7.3 於 昭和女子大学昭和記念講堂) [演奏を聴く(仮)]
震災の影響でマネージが出遅れた感があったが、その危機感が良かったのか、観客の動員は最近の中では
多いように感じた。一階席で8割。2階席ではほぼ満員。それではステージ順に。
(カッコ内は実測オンステ人数)
☆今回、帰りの新幹線に乗るため、合同・ステージストーム聴けていません
(エール交換)
同志社・・・コンパクトにまとめている。TOPは良くも悪くも荒れ気味。
慶応・・・厚いハーモニーでまとめているが、唄い方は消極的。
関学・・・阪神大震災以来、最高の出来。全国コンクール金賞の自信回復は大きい。
早稲田・・・舞台の1/3を占めるボリュームは圧巻!一部で指摘のある学指揮の
テクニックには確かに疑問を感じる部分もあるが、このメンバーなら
出来て当然。
1)同志社グリークラブ(30名)
同声三部合唱とピアノのための組曲「永訣の朝」
作曲:西村朗 作詩:宮澤賢治
指揮 伊東恵司 ピアノ 萩原吉樹
「人数の壁」からはまだ突破できないし、4回生は片手でも余るくらい。それでも、言語明瞭でTOPを中心とした
フレージングをしっかりつかんだ「攻める」唄い方を実感した好演。
「指揮者の曲造りが変わった?」と感じた方もいたが、「このメンバーでは攻める唄い方が可能」と判断して
シフトチェンジしたからだと思う。1回生20名が加わったコンクール・定演に期待が持てる。
2)慶応ワグネルソサイェティ男声合唱団(34名)
「中勘助の詩から」
作曲:多田武彦 作詩:中勘助
指揮 佐藤正浩 独唱 小貫岩夫(Ten)
実感するのは少数でも「人数の壁」を突破すると、ここまで声が前に来る事。発声も美しい。
状況描写の細かい多田作品をオペラチックな発声で劇的に料理した。水準以上の快演で
あることには間違いない。
ソリストは同志社グリー出身。コーラスとは対照的に「合唱ソロらしい」繊細な発声・唄いまわし
に唄ったのは微笑ましかった。
余談ながら、終曲のエンディングをソリストがフォローしたのは在りなんだけど、ちょっとだけ「ずるい」と
思ってしまった。それが、終始パートを繊細な音色に纏めようとしているのを含めて。
3)関西学院グリークラブ(50名)
「青いメッセージ」
作曲:高嶋みどり 作詞:草野心平
指揮 広瀬康夫 ピアノ 前田勝則
昨年全国コンクール文部大臣賞受賞で取り戻した自信はやはり大きい。余裕を持った水準以上の快演。
反面、伴奏に乗っかって無難に唄った感も拭えなかった。発声面ではP系がF系より浅く感じ、それが
言葉の緊迫感を削いでいる感覚にとらわれた。
4)早稲田大学グリークラブ(75名)
「方舟」
作曲:木下牧子 作詞:大岡信
指揮 高谷光信 ピアノ 寺本紗綾香
4団体の中で潜在能力は絶大。指揮者はその実力を「搾り出す」と言うより
「適材適所に振分ける」ようにドライブしていった様にみえた。
同志社と対照的だったのは、前者が「言葉を前に出していく」方向性」だったのに対し、
早稲田は「フレーズをしっかり鳴らせば詩が浮かび上がってくる」方向性だった事。
隙は無かったが、文より譜面が浮かび上がってくる演奏で、雄大な音の流れは
圧巻だった。
5)合同 「交響曲第九番合唱付きより第四楽章」
作曲:ベートーベン 編曲:轟千尋
指揮 小久保大輔 早稲田大学交響楽団
ソプラノ 牛津佐和子 アルト 永澤麻衣子
テナー 小貫岩夫 バスバリトン 稲垣俊也
残念ながら、時間切れで評価する程聴けなかったので・・・m(_ _)m
代わりにいたく同感した、パンフに書かれた小久保先生による「四連に対する思い」の締めの言葉を転記したい。
(四連&祖父福永陽一郎の思い出・選曲の経緯は省略)
・・・・
破壊は新たな創造を義務づける。肝心なことは、否定や破壊そのものではなく、「これではない」「これでもない」とどこかにあるはずの真実を求めて探求し続ける精神なのだと思う。その探求の中で何かが出現した後、肯定はそれを追ってなされる。暴挙だろうが冒涜だろうが構わないのだ。これまでの四連も快挙、怪挙取り混ぜて様々な挑戦が繰り返されてきた。「その時」にしか歌い得ない真実の声を上げることが、私たちに出来る唯一のことなのである。「人間が生きる喜び」の全てを肯定し、すべての人々と分かち合う、私たちの第九を今宵は高らかに歌いたい。 還暦を迎えてなお、若々しく挑戦し攻め続ける防衛戦を、倒れることなく、いつまでも。
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